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じわじわ、蝉の鳴き声と日差しの強さで夏を実感する。
チリーンとそよ風に揺れる風鈴がかすかな涼しさを運んできてくれるが、それもほんの短い間。
嫌味なほどに青い空を見上げて、目を焦がす。
「おや、ももさん。暑いでしょう、そんなところで…」
カラン、と差し出されたコップの中で氷が踊る音がした。
「わ、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
にこりと微笑む彼は、いつだって優しい。いつも、どんなときでも。
コップに付いている水滴がぽたり、とスカートにシミを付ける。
そしてお互い何も喋らないまま、どれぐらいの時間がたったのか、今のわたしにはよくわからなかった。
「…ごめんね」
「?なんで謝る必要があるんです」
「あなたが、ずっと見放さないでいてくれるから」
過ちばかりで、何もあなたに報いることができない。
わたしたちには、あなたがすべて。あなたに見放されたらわたしたちはどうなってしまうのか、想像もできない。
だからこそ、今あなたに、最上級のありがとうを。
「ありがとう、ずっと見ていてくれて」
>>いつか、報いるために